日本の外国株ETFは購入しないほうがいいかもしれない
あなたはインデックス投資で、外国株ETFを中心に運用しているのではないか。
その外国株ETFは日本の資産運用会社の商品だろうか。その場合、もしかしたら税金の面で損をしているかもしれない。また、信託報酬も、日本の商品の場合、外国のものと比べ、高いことが多い。税金、費用の面で考えると、外国の市場で出回っている外国のETFを購入することが一番効率が良い。
この記事では、日本で外国株ETFを運用する際の注意点と、意外に簡単な外国のETFの購入方法を説明していく。ぜひ、参考にしてほしい。
※分かりやすくするために「配当」と表記するところも「分配金」と表記している
日本の外国株ETFは税務上不利
日本の外国株ETFは、外国の外国株ETFと比べ、分配金を受け取るときに税務上不利になる。税金の還付が受けられないからである。
また、無分配型の投資信託も、実は海外現地で所得税が課税されている。
まずは、どういう風に課税されるのか、ざっくりと説明しよう。
分配金が課税される回数は2回
課税される回数は2回である。内訳は①投資先の国②自分の国の2回だ。
以下の例では、日本のアメリカ株ETF(A)とアメリカのアメリカ株ETF(B)の2つのETFから、日本で分配金をもらうと仮定して、説明していく。両方とも購入できる国が違うだけで、同じアメリカ株式に投資しているとする。
まずAとBで課税される回数は両方とも2回ずつだ。
- 1回目:アメリカ(税率は10%)
- 2回目:日本(税率は約20%)
Aを所有している場合、送付される配金の金額の通知書には、1回目の課税後の金額が記載されている。しかし、Bを所有している場合、送付される分配金の金額の通知書には、1回目の課税がされる前の金額が記載されている。なお、無分配型の投信の場合、1回目の課税だけがされている。
そして、Bの場合、1回目のアメリカでの課税を、確定申告すると一部控除してもらえるが、Aの場合はできない。(控除してもらえる仕組みを外国税額控除という)
理由は法律やファンドの仕組み上、そうなっているから、としか述べることができない。確認したい人は資産運用会社に問い合わせることを勧める。私もそうした。AとBは売っている場所が違うだけだが、税金の仕組みが違うのだ。
補足:外国税額控除について
この外国税額控除というのはどういう仕組みかというと、確定申告したときに、その年の所得税が減額され、還付されるという仕組みである。そのため、所得税がかかってないとき、外国税額控除はできない。
実例:「iシェア―ズMSCIコクサイ ETF」と「iシェア―ズ先進国株 ETF」
税務上の違いを示す例として、 ①「iシェアーズ MSCI コクサイ ETF」と②「iシェアーズ 先進国株ETF」を使用する。
この二つは、購入できる市場が違うだけの同じETFである。②のファクトシートに、信託財産となるETFが①だと書いてあるのが同じである理由だ。前者はアメリカの市場、後者は日本の取引所で売買されている。
両方の過去の分配金金額を見てみよう。
2つのETFの分配金を比較
以下が、簡単に為替調整をした後の過去の分配金の表である。
2つの分配金の差額は、厳密な為替の調整をしていないため、ちょっとずれているが、①の約1割分であることが分かると思う。つまり、②はすでにアメリカで課税される1割分が課税されているのだ。
ここで、課税されて最終的に手元に残る金額は同じである。①の場合、アメリカで1割、日本で2割課税された金額が手元に残る。②の場合は、日本で2割課税された金額が手元に残る。
①の場合、確定申告すれば、投資先の現地で課税された金額は戻ってくる。しかし、②の場合、現地で課税された金額は戻ってくることはない。
日本の市場で外国株のETFを購入することは損なのだ。
外国のETFのほうが信託報酬が、基本的に安い
外国のETFのほうが基本的に信託報酬が安い。最近は差が縮まってきたようだが。
例えば、日本取引所で購入できる外国株ETFと世界的なアセットマネジメント企業であるバンガードの商品を比較すると、その差は一目瞭然である。
日本取引所の信託報酬の平均は大体0.5%ぐらいだろう。しかし、バンガードの場合、おそらく平均は0.2%をきるのではないか。0.0数%のものも多い。
外国のETFの購入方法
ETFを購入するのに、もちろん証券口座が必要になるが、全ての口座で外国のETFを購入できるわけではない。また、野村證券などの証券口座でも購入できるようだが、証券口座の維持手数料がかかる。
ローコストで証券口座を持つことができるネット系の証券会社で、外国のETFを購入できるのはSBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社のようだ。
この3つから外国株式取引の口座を開設すればいい。それだけである。
さいごに
「貯蓄から投資へ」という言葉が忘れ去られて久しい。なぜ忘れられたかという原因の一つに、やはり制度上の問題があるのではないか。
今回の税金の還付に関する話が良い例である。実質的に同じものに投資をしているのに、税金の仕組みが違うというのはおかしい。
有名な経済学者のトマ・ピケティ氏によると「資本の生産性>経済成長率」であるため、世界的に貧困の格差が増大したらしい。資本の生産性やマネーリテラシーの重要性を改めて感じる。
以前はカブドットコム証券が強いと思っていた。しかし外国ETFが購入できないため、正直なところ評価が低くなっている。
何度もお金を受け取ると、何回も税金がかかってしまうため損かもしれないということを書いた記事だ。無分配型は主流ではないようだが。
インデックス投資について概要を書いた記事だ。